D-3 和音 フォルダー「1.単一成分音による長短3和音」  8種の音律について,基本周波数成分だけの音で作ったCメジャー・コード(ドミソ)と aマイナー・コード(ラドミ)を入れてあります.波形包絡を「3.図」に置いてあります. フォルダー「2.8成分音による長短3和音」  8種の音律について,8成分の高域減衰型調波合成音で作ったCメジャー・コード(ドミソ)と aマイナー・コード(ラドミ)を入れてあります.波形包絡を「3.図」に置いてあります. フォルダー「3.図]  サブフォルダー「音律による違い」,「長三和音/短三和音による違い」,「転回型による違い」を示します. 1.音律による違い 図:「8種の音律での単一成分による長短三和音の波形包絡(5秒/音)」  8種の音律での単一成分(基本波のみ)による長三和音(C-メジャー:ドミソ)と短三和音(a-マイナー:ラドミ) を1和音あたり5秒ずつ描いた波形包絡で,うなりを包絡線の波として見ることができます. 純正律では長短ともに和音構成音の基本周波数が完全な整数比(メジャーでは:5:6, マイナーでは10:12:15)なので うなりはありません.12平均律では,ミが整数比から約2.6Hz,ソが0.5Hzずれていることが2重の凹凸に,また ピタゴラス音律ではソの周波数はドのちょうど3/2倍ですが,ミが約4.2Hzズレているのでそのうなりが細かい凹凸に 現れています.これらに対して,53平均律はミが約0.3Hzずれているだけで,ソのズレは0.02Hz以下で無視できる程度です. 53平均律のゆっくりした変動はこの0.3Hzの表れです. ●三和音(長三和音と短三和音)の音律による違い フォルダー「単一成分による長短三和音」  正弦波1本だけで作った音で構成される長三和音(C-メジャー)/短三和音(a-マイナー)をそれぞれ 8種の音律について作って繋いだものです. フォルダー「8成分音による長短3和音」  8成分の高域減衰型の調波構造音で構成される長三和音/短三和音を8種の音律について作って繋いだものです.  下記の8種の音律で各音を正弦波1本だけで作った音による C-メジャーと a-マイナーの 和音(コード)の音を入れてあります. 各音は0.5秒のものと5秒のものがあり,立上りと立下りにテーパーを付けてあります. サブフォルダー「8音律長短3和音」 C-Major_8-temperamets.wav : C-メジャー(基本位置:ドミソ) a-minor_8-temperamets.wav : a-マイナー(基本位置:ラドミ) ●使用した音律(音ファイルの前から順) 純正律 12平均律 53平均律 ピタゴラス音律 ミーントーン(中全)音律 キルンベルガー音律 ヴェルクマイスター音律 ヤング音律  これらの基本波だけによる各和音0.5秒の波形を「正弦波による長短3和音.png」に入れておきました. これらから,波形の包絡線の時間変化の速さが一応わかります.  純正律では,メジャー・マイナーともに単一成分・調和8成分どちらについても周期性は基本周波数に よるものだけで,波形包絡に周期的な変動は見られません.53平均律もほぼ同様です.これに対して, 12平均律やピタゴラス音律ではC-メジャーで基本周波数による周期性以外に波形包絡に周期的な揺れが 見られます.12平均律やピタゴラス音律でも a-マイナーでは波形包絡に周期的な揺れが見られないのは, 「ド」がオクターヴ上がったためにうなりが速くなって包絡の揺れが見え難くなったためです.  1和音あたり0.5秒の図では分かり難いですが,中全音律,キルンベルガー音律,ヴェルクマイスター音律, ヤング音律でも波形包絡に緩やかな変化が見られ,長時間で見るとこれがうなりとして聞こえることになります. 1和音あたりの長さを5秒にした音のファイルと0.5秒にした音雄ファイルを「単一成分による8種の音律での C-major和音」として入れてあります.うなりは各音5秒のものが分かりやすいですが,和音の知覚としては 0.5秒ずつの方が比較しやすいと思います   a-マイナーでは和音として感じられる高さが53平均律で少し低く,ピタゴラス音律では少し高く, ミーントーン(中全)音律では低く聞こえます.これは和音の根音(ラ)の高さが効くからであろうと思われます. 詳しくは音律表(Excelファイル)を参照してください. 2.長三和音/短三和音による違い 図:「8種の音律での単一成分による長短三和音の波形包絡(5秒/音)」   「8種の音律での成分数別長短3和音の波形包絡(0.5秒/音)」  参考のために,1和音あたり0.5秒の波形の図を単一成分の音で構成される和音と8成分の調波合成音で構成される和音 に分けて,音律別にまとめたものをフィルダー「図」に入れておきます.細かい周期は基本周波数によるもので, 包絡の大きな周期がうなりです.c-メジャーの12平均律とピタゴラス音律によく現れています.中全音律,キルンベルガー音律, ヴェルクマイスター音律でゆっくりした包絡の揺れが見られますが,観測時間が短いので「0.5秒/音」の図からは 周期性は分りません.「5秒/音」の図で少しわかります.音としてのうなりは「5秒/音」のファイルで聞いてください.  C-メジャーとa-マイナーは並行調(長短が対になった調で,平均律では鍵盤上で同じ高さのキーを使う)ですが, C-メジャーの主和音はドミソでメジャーコード(3度音が根音から長3度)で,a-マイナーの主和音はラドミで マイナーコード(3度音が根音から短3度)になります.a-マイナーの方が周波数帯域が少し上になるため,波形が C-メジャーよりも細かくなっています.構成音が単一成分による和音と8成分の調波構造音の場合とを比べると, 成分の数が圧倒的に多くなる8成分音の場合の方が,特に和音構成成分の周波数が簡単な整数比から外れる和音で 波形の細かさが上がっています.ただし,C-メジャーで見ると,包絡の変動の時間あたりの頻度は変わらないことが 見て取れます. ●調波合成音なら基本周波数が非整数でも,正弦波1本だけで作った和音では  高調波ひずみが生じないとビートは生じないはずだけど・・・  再生系にひずみがなければ取り上げたすべての音律で基本波成分間の周波数差が数100Hz以上あるので どの音律でもうなりとして聞こえる範囲の振幅変動はありませんが,通常,音楽に使われる音には 倍音が乗っているのでうなりが生じます.シミュレーションでは高調波を作るとうなりが多重に生じて わかり難くなるので正弦波を使いますが,うなりの状況はそれでわかります.  フォルダー「単一成分和音」の中の各音律での和音でのうなりを和音構成音の周波数が簡単な整数比に なっている純正律(長三和音で4:5:6, 短三和音で10:12:15),あるいはそれに非常に近い53平均律と その他の音律で比べてみて下さい. ●8成分音による長短3和音(成分数の影響) 調波合成音なら基本周波数が非(簡単)整数の場合に高調波間の多重うなりが生じます.  フォルダー「1成分長短3和音」と「8成分長短3和音」の中の,対応する音律による和音 を聴いて,どちらがうなり(多重の場合は「ざらつき」に聞こえる)が多いかを聞き比べてください. 【注】コンピュータによる合成音の場合は,発信周波数が正確かつ完全に定常的に なるので,正確に整数比になった正弦波を重ねると,特に初期位相を揃えた場合には 波形の立上りが急峻になり,非常に鋭い(きつい)音に聞こえます. これに対して,成分周波数が微妙にズレて重なりがない音は,立上りの急峻さが減少し, 成分が拡散するので,音としては柔らかく華やかに聞こえる傾向があります. 通常の楽器(シンセサイザーを除く)による演奏ではいくら純正律で調律・演奏しても, 和音構成音の基本周波数が必然的にいくらかは正確な周波数比からズレるので, コンピュータによる正確な純正律(通常の楽器演奏では生じない正確さ)に見られるような 不都合は起きません. 3.和音の転回  和音のうなりの状況は転回によって変わりますが,その変わり方は音律によって異なります.  ピタゴラス音律やミーントーン(中全)音律では,オクターヴの周波数が正確には 2にならないので,オクターヴ上の音を含む和音では,正弦波1本だけで作った和音でも うなりが生じる.「ドミソ」の「ド」を1オクターヴ上げた「ミソド」は「ドミソ」の 第1転回と呼ばれ,和声法上では「ドミソ」と同一の「和声機能」をもつとされるが, オクタ―ヴの周波数比が正確に2でない音律では,「ドミソ」がきれいな整数周波数比に なっていても,「ミソド」の周波数比は整数比からはずれることがあるので,楽器の音では 和音ではうなりが生じる.ただ,通常の楽器演奏ではピッタリ正確にどれかの音律で弾く という状況はあり得ず,正確な音律から微妙に外れるのが一般的で,そのような状況では 適度な幅と速さの振幅の揺れはむしろ快い印象を与える.  フォルダー「図」の中のサブフォルダー「転回型による違い」に, フォルダー「8音律長短三和音」に入れてある音の波形比較のために, 「基本波のみによるドミソとミソドのうなり.jpg」を入れておきました.  「8成分長短三和音」と「単一成分長短三和音」の中の,対応する音律でのうなりの違いを比較してください. 音律による違いに注目すると,純正律と53平均律ではほとんど差がありませんが,他の音律では 「1成分」と「8成分」とでかなり違うことが分ります.